この記事でわかること
- いまの住まいの困りごとを、間取りの要望に翻訳した実例の一覧
- 33坪に入らず見送ったものと、決めきれない議題を宿題にした進め方
- 設計士の初回案から直した箇所と、その理由
- 図面をもらったら見る8項目と、メジャーと持ち物で寸法を確かめる方法
- この決め方でも防げなかったこと
間取りを考えはじめた頃、施工事例やSNSの実例をたくさん見ました。どれも良く見えて、見るほど決められなくなります。吹き抜け、アイランドキッチン、大きな窓。良さそうなものを足していくと、予算も広さも足りなくなりました。
わが家がやったのは逆の順番です。先にいまの暮らしの困りごとを書き出し、それを解決する形として間取りを決めました。この記事では、その手順を最初から最後まで書きます。前提は、東海圏の注文住宅、2階建て・延床33坪、夫婦と子ども1人(もう1人を見越した間取り)、夫婦ともリモートワークです。
全体の時系列はこうなりました。
| 時期 | やったこと |
|---|---|
| 本格検討の前 | 夫婦で困りごとを書き出して擦り合わせる |
| 開始〜1ヶ月 | 要望を渡し、設計士の初回案が出る。階段や吹き抜けなど大きな論点をこの時期に確定 |
| 2〜6ヶ月 | 毎週末打ち合わせ。図面を修正しながら、収納の幅や扉の種類まで詰める |
| 6〜8ヶ月 | 間取り確定後、設備・外構・申請関係。外構の打ち合わせは間取りが決まってからが良いと言われた |
毎週末で半年というのは長く感じるかもしれません。ただ、間取りは着工したら直せません。逆に言えば、この半年だけが直せる期間でした。
事例集ではなく、いまの住まいの困りごとから書き出した
最初にやったのは、理想を描くことではなく、いまの家の不満を集めることでした。賃貸で暮らしていて不便だったことと、これから子どもと暮らす場面を思い浮かべて、本格的な検討が始まる前に夫婦で擦り合わせています。出てきたのは、靴が多くて玄関に入りきらない、ベビーカーやキックバイクや通販の段ボールの置き場もない、夫婦ともリモートワークなのに仕事をする場所が足りずWeb会議の声も気になる、ドラム式から出した洗濯物を畳む場所としまう場所がばらばら、室内干しの場所がない、タオルや下着やパジャマは洗う場所の近くにしまいたい、といったリストです。
地味なリストだと思います。ただ、半年の打ち合わせで一番役に立ったのがこれでした。迷ったときに、判断の基準として何度もここへ戻ることになります。
困りごとのままでは設計士に伝わりません。靴が多い、は要望ではないからです。1つずつ、だから何が欲しいのかに変換していきました。
| 困りごと | 間取りの要望に翻訳 |
|---|---|
| 靴・ベビーカー・キックバイク・段ボールの置き場がない | 広めの土間収納。中が見えないようにする |
| リモートワーク2人分の仕事場所と、Web会議の声 | 書斎を2つ、別々の階に。2階にもトイレと洗面 |
| 洗濯物を畳む場所・しまう場所がばらばら | 脱衣所とランドリーを兼ねて、畳むカウンターと収納をひとまとめに |
| 室内干しの場所がない | 物干しバーと、換気できる照明 |
| 洗面まわりの生活感 | 歯ブラシなどを隠せるタイプの洗面台 |
| 家族の服の管理 | ウォークインのファミリークローゼット |
いま住んでいる家の特徴は、ほぼ全部この表の右側でできています。事例集を見て素敵だからという理由で採用したものは、思い返してもひとつもありません。
要望は粒の細かさを気にせず、全部そのまま渡した
翻訳した要望は、遠慮せずそのまま設計士に渡します。こんな細かいことまで言っていいのかと迷うかもしれませんが、細かくていいです。わが家が実際に渡した要望には、階段はリビングの外に、書斎は1階の東側に、キッチンはコンロが右でシンクが左、正面から見たときに玄関まわりが車やカーポートに隠れないか気になる、といったものが混ざっていました。
キッチンの左右の向きも、外から見たときの印象も、全部間取りに関わります。設計士は言われていないことを反映できないので、気になっていることは粒の大きさを気にせず出した方がいいです。優先順位だけ添えておけば、全部叶わなくても調整はプロがやってくれます。
33坪に全部は入らない。吹き抜けと畳コーナーは見送った
検討して見送ったものを書きます。吹き抜けは作るなら3畳は欲しいのですが、その広さを吹き抜けに使う判断ができませんでした。2階への音漏れと耐震への不安もあります。畳コーナーは手入れの手間を考えてやめました。書斎は2部屋設けることを優先して、1部屋は2〜3畳の最低限にしています。部屋数には満足していますが、広さだけは今でももう少し欲しかったと思います。
こうした大きな議題は、打ち合わせの場では決めませんでした。決めきれないものは宿題として持ち帰り、次の打ち合わせまでに夫婦で決めています。当時の議事録には、夫婦二人で話し合う、吹き抜けの有無と階段をリビング内にするか、年内に確定、というメモがそのまま残っていました。設計士の前で即断すると、あとで配偶者と揉めます。
間取りで夫婦の意見が大きく割れることはありませんでした。割れたのはキッチンなど設備の方です。間取りが揉めなかったのは、この持ち帰り方式と、図面より前の段階で暮らし方を話し合っていたからだと思います。
要望を渡す相手を決める
この要望リストは、渡す相手が決まっていないと使いようがありません。わが家は先に会社を決めてから渡しましたが、順番としては、要望を整理した状態で会社を探す方が早いです。
同じ要望でも、返ってくる提案は会社によって違います。予算と要望を先に伝えて、その条件で建てられる会社を絞ってから打ち合わせに入ると、修正の回数を減らせます。
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初回案から直したのは、リビング階段・玄関・ランドリー・書斎の扉
最初の間取り案は設計士が作ってくれました。その図面を見ながらパースをパソコンで表示してイメージを膨らませ、気づいたことは紙の図面に直接手書きしていきます。会議のメモも要望も、ほとんど図面の余白に書いていました。
最初はリビングを通って2階へ上がる案でした。見た目は良かったのですが、2階への音漏れと、思春期の子どもが毎回リビングを通るのを嫌がるかもしれないという話になり、独立した階段に変えています。玄関は来客のときに人が混雑するのが嫌で当初案より広げ、玄関からリビングへの通路は人がすれ違える幅を確保しました。2階のクローゼットとは別に、外出時にコートをさっと羽織れる収納も玄関のそばに足しています。
ランドリーは畳む作業がしやすいよう、当初案より広く取りました。書斎の扉は、Web会議の声が漏れないように開き戸に変えています。
図面だけでは決めきれず、長く悩んだ場所もありました。キッチンの位置とダイニングの机の置き方は、何度も配置を変えて検討しています。子ども用の学習机を買うかどうかも迷いましたが、担当者に子どもが3人いて、実際はみんなリビングの机で宿題をやりますよと教えてもらえたのが決め手になりました。カタログより、実際に住んでいる人の話の方が参考になります。
図面は、動線・音・収納・扉・コンセント・エアコン・窓・外まわりの順に見る
動線は、朝の支度、帰宅、洗濯の3つの場面で図面の上を実際になぞります。音は上下の音と部屋どうしの音の両方で、図面に描かれていないので意識して見ないと漏れます。収納は広さより先に、何を入れるかを決めます。扉は引き戸か開き戸か、どちらに開くかで、音と気密と家具との干渉が変わります。
コンセントとスイッチは、使う場面を想像して位置と数を決めます。わが家はここで1つ漏らしました。階段の中間にサーキュレーター用の1口を用意しておらず、入居後に気づいています。エアコンは全部屋に最初から付けなくても、配管用の穴だけ先行しておくと後付けが楽になるので、2部屋は穴と配管の先行だけにして出費を分散しました。
窓は大きさより位置です。わが家は東側の高い位置にある細長いFIX窓が、面積のわりに朝の光を入れてくれています。外まわりとの関係は、軒の長さ、駐車場からの動線、道路から家がどう見えるかです。外構の打ち合わせは間取り確定後になりますが、見え方の要望は間取りの段階で伝えておいていいです。
この8項目を見るときに一番役に立ったのは、図面の数字を実物に置き換えることでした。通路の幅、カウンターの奥行き、収納の間口。気になる数字をメジャーで実際の長さに伸ばして、目の前で見ます。図面の900mmと、目の前に伸ばした900mmでは、広さの感じ方がまるで違いました。
もうひとつは、持ち物の寸法で確かめることです。パントリーは案では幅1.9mありましたが、冷蔵庫とセカンド冷凍庫を入れると残りが60〜70cmになるので、入れるのは冷凍庫とゴミ箱だけにして冷蔵庫は手前に出しました。奥行きは30cmだと市販の収納カゴがちょうど入り、45cmに広げると冷蔵庫との間の通路が狭くなります。寝室はクイーンベッドを置くかセミダブルにして60cm空けるかを家具の寸法で確かめ、子ども部屋は収納込み5.25畳に幅110cmの机が置けることを確認しました。
広さは畳数ではなく、置きたい物の寸法で考えます。半年の打ち合わせで身についたのは、結局これでした。
図面と寸法では防げないものが残る
ここまでやって、間取りの後悔は3つまで減りました。軒の長さ、階段のコンセント、玄関の壁の質感です。このうち階段のコンセントは、図面の段階で拾えたはずでした。
残る軒の長さと玄関の壁の質感は、図面と寸法の確認では防げません。雨の日の外壁の濡れ方も、素材の質感も、住むまで分からなかったからです。詳しくは注文住宅の間取り、後悔がほぼゼロだった理由【それでも直したい3ヶ所】に書いています。
図面のチェックまで終えたら、最後に雨の日この家でどう過ごすか、夏の午後はどうかも想像してみてください。わが家はそこまでやらず、軒で少し後悔しました。
半年かけて分かったのは、間取りを決める作業のほとんどは図面を読むことではなく、いまの暮らしを言葉にすることだったということです。
今から選ぶなら
わが家の要望リストができたのは会社を決めた後で、複数社に同じものを渡して提案を比べる機会はありませんでした。
今からなら、困りごとの翻訳まで終えた状態で会社を探します。要望が揃っていれば、返ってくる提案の差がそのまま比較材料になります。
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困りごとを書き出すやり方も、決めきれない議題を持ち帰って二人で決める方式も、家を建てると決める前の話し合いで身についたものでした。その話し合いの中身と、書き込んで使えるシートは家を建てると決める前に、夫婦で話し合った5つのことに置いてあります。
33坪に何が入って、1年住んで足りたのかどうかは33坪の注文住宅、広さは足りたか。1年住んでわかったことに書いています。


